制震ダンパーとは?耐震・免震との違いと耐震等級との関係
制震ダンパーとは、建物の壁の中などに取り付けて、地震の揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形をおさえる装置です。建物そのものを強くする「耐震」に対して、揺れを吸収して小さくするのが「制震」の役割です。
一方で、制震ダンパーの効果は、住宅の耐震等級の評価にはそのまま表れません。この記事では、耐震・制震・免震の違い、制震ダンパーの種類と効き方、耐震等級や壁倍率・国土交通大臣認定との関係、「意味ない」と言われる理由、そして新築・建売住宅で確かめたいポイントを、国の資料をもとにご紹介します。
- 制震ダンパーとは
- 耐震・制震・免震の違い
- 制震ダンパーの種類と効き方
- 耐震等級・壁倍率・大臣認定との関係
- 「意味ない」と言われる理由と、正しい見方
- 費用の見方
- 新築・建売住宅で確かめたい5つのポイント
- よくある質問
1. 制震ダンパーとは
制震ダンパーは、地震で建物が揺れたときに、その揺れのエネルギーを熱などに変えて吸収する装置です。木造住宅では、柱と梁で囲まれた壁の中に組み込む形が多く、外からは見えません。
地震のとき、建物は左右に揺さぶられ、柱や梁、壁がゆがみます。このゆがみが大きくなるほど、柱と梁の接合部や壁が傷み、くり返しの揺れで強さが落ちていきます。制震ダンパーは、このゆがみを小さくおさえることで、建物の傷みを減らし、本震のあとに続く揺れにも備えることを目的としています。
くり返す揺れへの備えとして注目された
制震が注目されるようになった背景のひとつが、2016年(平成28年)の熊本地震です。この地震では、震度7の揺れが2回観測されました。国の委員会も、大きな揺れがくり返し建物に加わったことをふまえ、一連の地震全体の結果として被害を分析しました。「1回の大きな揺れに耐える」だけでなく「くり返す揺れで傷みをためない」ことへの関心が高まりました。制震ダンパーは、この「傷みをためない」ための備えとして選ばれています。
2. 耐震・制震・免震の違い
地震への備え方には、大きく「耐震」「制震」「免震」の3つがあります。どれか1つを選ぶものではなく、住宅の地震対策は「耐震」を土台にして考えます。
| 耐震 | 制震 | 免震 | |
|---|---|---|---|
| 考え方 | 柱・梁・壁を強くして、揺れに耐える | 装置で揺れのエネルギーを吸収し、変形をおさえる | 建物と地面の間に装置を入れ、揺れを建物に伝えにくくする |
| 主な方法 | 耐力壁、筋交い、構造用合板、接合金物 | 壁の中などに制震ダンパーを取り付ける | 基礎と建物の間に免震装置を入れる |
| 住宅性能表示での扱い | 耐震等級として評価される | 揺れを吸収する働きそのものを評価する等級はない | 免震建築物として表示される |
| 地震保険の割引 | 耐震等級割引(等級3で50%など) | 制震だけを理由にした割引の区分はない | 免震建築物割引(50%) |
出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「地震などに対する強さ(構造の安定)」「住宅性能評価書の見方」(2025年4月版)、財務省「地震保険制度の概要」
耐震は建物の強さそのもの、制震は揺れによる傷みをおさえる働き、免震は揺れを建物に伝えにくくする働きです。住宅では、耐震で十分な強さを確保したうえで、制震を組み合わせるのが基本の考え方です。
3. 制震ダンパーの種類と効き方
制震ダンパーは、揺れを吸収するしくみによって、いくつかの種類に分けられます。
| 種類 | 揺れを吸収するしくみ | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| オイルダンパー | 筒の中の油が流れるときの抵抗で揺れを吸収する | 揺れの速さによって効き方が変わる。耐久性と点検の考え方 |
| 粘弾性ダンパー(ゴム・樹脂など) | ゴムや特殊な樹脂がのびちぢみするときに揺れを熱に変える | 温度による性能の変わり方 |
| 鋼材ダンパー | 鋼材が変形するときに揺れを吸収する | 大きな揺れのあとの状態と、交換の要否 |
| 摩擦ダンパー | 部材どうしがすべるときの摩擦で揺れを吸収する | どの大きさの揺れから効き始めるか |
どの種類にも得意・不得意があり、「どれが一番」とは言い切れません。大切なのは、製品の性能が何の試験で確かめられたか、建物のどこに何本取り付けるのかが、設計の根拠とともに説明されているかどうかです。
取り付ける本数と配置の考え方
制震ダンパーは、1本付ければ建物全体に効くというものではありません。建物の形や大きさ、壁の配置によって揺れ方が異なるため、どこに何本取り付けるかで効き方が変わります。とくに、揺れが大きくなりやすい場所や、壁のバランスが偏りやすい場所への配置が大切です。建物ごとに配置を検討し、その根拠を説明できるかどうかは、会社選びのひとつの目安になります。
4. 耐震等級・壁倍率・大臣認定との関係
制震ダンパーを選ぶうえで、意外と知られていないのが、耐震等級や壁倍率との関係です。
制震の働きは、耐震等級の評価には入らない
住宅性能表示制度で地震について表示されるのは、「耐震等級(倒壊等防止・損傷防止)」と「免震建築物」です。制震ダンパーが揺れを吸収する働きそのものを評価する等級はありません。つまり、制震ダンパーを付けても、それだけで耐震等級が上がるわけではありません。耐震等級は、壁の量や構造計算など、建物の強さで決まります。
壁倍率と、国土交通大臣認定
「壁倍率」は、木造住宅で、地震や風に抵抗する壁の強さを表す数値です。筋交いや構造用合板など、一般的な壁の倍率は、建築基準法施行令46条4項にもとづく国土交通省の告示で決められています。それ以外の新しい壁の仕様は、国土交通大臣の認定を受けると、その倍率を使えるようになります。
制震ダンパーの中には、筋交いなどと一体になった壁として大臣認定を受け、壁倍率を持つ製品があります。この場合、その壁は耐力壁として壁の量の計算に数えられることがあります。製品の認定の内容と、設計での扱いは、設計者に確かめておくと安心です。
2025年4月の改正
2025年(令和7年)4月から、木造住宅の壁の量の基準などが見直されました。国土交通省の通知では、筋交いや面材などを組み合わせた壁の倍率の上限が7倍とされ、筋交いの端部の決まりが見直されて、K型などの筋交いも大臣認定を受けて使える範囲が広がりました。家づくりの時期によって基準が異なるため、建てる会社に、どの基準で設計しているかを確かめておくとよいでしょう。
よくある疑問への答えは、このコラムの最後の「よくある質問」にまとめています。
出典:建築基準法施行令46条(e-Gov法令検索)、国土交通省「建築基準法施行令の一部を改正する政令及び構造関係告示の改正について」(国住指第501号)
5. 「意味ない」と言われる理由と、正しい見方
制震ダンパーについて「意味ない」という声を見かけることがあります。その理由は、主に次の4つです。
| 「意味ない」と言われる理由 | 正しい見方 |
|---|---|
| 耐震等級が上がらない | 制震は等級を上げるためのものではなく、揺れによる建物の傷みをおさえるためのもの。耐震とは役割が違います |
| 効果の数字が製品ごとにばらばら | 試験の方法や条件が製品ごとに異なるため。数字だけでなく、どんな試験で確かめたかを見ることが大切です |
| 付けても倒れるときは倒れる | 制震は耐震の代わりにはなりません。十分な耐震性を確保したうえで組み合わせるものです |
| 本数が少ないと効かない | 効き方は取り付ける本数と配置で変わります。建物ごとに配置を検討しているかを確かめます |
つまり、制震ダンパーは「耐震の代わり」ではなく、「耐震の上に重ねる備え」です。十分な耐震性のある建物に、根拠をもって配置された制震ダンパーは、くり返す揺れによる傷みをおさえる助けになります。
6. 費用の見方
制震ダンパーの費用は、製品の種類や建物の大きさ、取り付ける本数によって大きく変わります。紹介されている金額の多くは、メーカーが自社の製品について示した目安です。
費用を比べるときは、金額だけでなく、次の点をそろえて見ることが大切です。
- 製品の本体価格と、取り付けの工事費が含まれているか
- 何本を、建物のどこに取り付けるか
- 点検や交換が必要かどうか、保証の内容
新築の住まいでは、制震ダンパーが標準で含まれている場合もあります。その場合は、どの製品を何本使っているかを確かめておくと安心です。
今の家に後から付けることはできる?
制震ダンパーは、今お住まいの家に後から取り付けることもできます。ただし、壁や天井を一部はがす工事が必要になり、建物の状態によっては先に耐震性を高める補強が必要な場合もあります。後付けを考えるときは、まず耐震診断で建物の状態を確かめ、そのうえで制震を組み合わせるかを検討するのが順番です。新築のときに組み込んでおけば、こうした工事の手間をかけずに済みます。
7. 新築・建売住宅で確かめたい5つのポイント
制震ダンパーが付いた住まいを選ぶときは、次の5つを確かめておくと、言葉だけでなく中身で比べられます。
| 確かめること | 見るところ・聞くこと |
|---|---|
| 1. 製品名と、大臣認定の有無 | どの製品か。壁倍率の大臣認定を受けているか |
| 2. 取り付けた本数と配置 | 建物のどこに何本あるか。配置の根拠の説明があるか |
| 3. 建物そのものの耐震性 | 耐震等級はいくつか。等級を示す書類があるか |
| 4. 効果の数字の根拠 | どんな試験で、どんな条件で確かめた数字か |
| 5. 点検と保証 | 点検や交換の要否、保証の範囲と期間 |
耐震等級の確かめ方は、耐震等級3のコラムでくわしくご紹介しています。建売住宅で地震への備えを選ぶ順番は、&RESORT Lifeの記事もご覧ください。
8. よくある質問
- 制震ダンパーを付けると、耐震等級は上がりますか?
- 揺れを吸収する働きは、耐震等級の評価には入りません。耐震等級は壁の量や構造計算など、建物の強さで決まります。ただし、大臣認定で壁倍率を持つ製品は、耐力壁として壁の量に数えられる場合があります。
- 耐震等級3なら、制震ダンパーはいりませんか?
- 耐震等級3は建物の強さを示すもので、制震ダンパーは揺れによる傷みをおさえるものです。役割が違うため、組み合わせることで、くり返す揺れへの備えを厚くできます。
- 制震ダンパーを付けると、地震保険は安くなりますか?
- 制震だけを理由にした割引の区分はありません。地震保険の割引は、耐震等級割引や免震建築物割引などが対象です。
- 制震ダンパーは何年もちますか?
- 種類や製品によって異なります。点検や交換が必要かどうか、保証の期間とあわせて、建てる会社やメーカーに確かめておくと安心です。
- 建売住宅で、制震ダンパーが付いているかはどう確かめますか?
- 販売会社に、製品名と大臣認定の有無、取り付けた本数と配置を尋ねてみてください。図面や仕様書で確かめられる場合もあります。
まとめ
制震ダンパーは、地震の揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形をおさえる装置です。耐震等級を上げるものではありませんが、十分な耐震性のある建物に組み合わせることで、くり返す揺れによる傷みをおさえる助けになります。
選ぶときは、製品名と大臣認定、取り付けた本数と配置、建物そのものの耐震等級をあわせて確かめることが大切です。実際の住まいをご覧になりたい方は、エリアごとの物件情報や見学会もぜひご活用ください。