制震構造って何?仕組みや制振構造との違いも解説
住宅の構造には「制震」「耐震」「免震」と種類があり、それぞれ異なる仕組みによって揺れに備えます。日本は地震大国ですので、家を購入する際は揺れに強いか否かも重視したいポイントです。
今回は地震に強い家づくりを目指す人に向けて、制震構造の仕組みと特徴を始め、制振構造・耐震構造・免震構造との違い、メリット・デメリットを解説します。
制震構造とは?
制震構造は揺れを軽減する仕組みの一つで、多くの住宅に取り入れられています。具体的にどんな構造なのか、仕組みと特徴、代表的な建築物を見ていきましょう。
仕組み
制震構造とは、建物の骨組み部分に制震装置を設置し、揺れを軽減する仕組みです。制振装置は地震や強風などによる振動エネルギーを吸収して揺れを小さくする機械で、制震ダンパーと呼ばれます。制震ダンパーは後付けできるため、リフォームによって制震構造にすることも可能です。
なお、制震ダンパーには「ゴムダンパー」「オイルダンパー」「鋼材ダンパー」と複数の種類があり、それぞれ特徴は異なります。制震ダンパーの役割や種類について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
制震ダンパーってなんのこと?役割・必要性・種類を解説
特徴
制震構造の主な特徴は次のとおりです。
・制震装置が揺れを吸収・軽減する
・建物の変形を軽減できる
・建物内部(柱・梁・壁など)の損傷を軽減できる
・強風や繰り返す揺れにも対応できる
制震構造は制震ダンパーが揺れを吸収するため、建物が受けるダメージを軽減できるのが大きな特徴と言えます。
制震構造の代表例
制震構造は一般住宅だけでなく、日本を代表する建物にも多く取り入れられています。
・東京スカイツリー
・六本木ヒルズ森タワー
・あべのハルカス
・東京ミッドタウン日比谷
・熊本城
地震や強風による揺れは上階ほど感じやすいため、制震構造は高層ビルや高層マンションに有効です。熊本城は2016年に発生した熊本地震によって被災しましたが、天守閣に制震ダンパーを設置した上で再建されました。
制震構造と制振構造の違い
住宅の構造について調べていると、“制振構造”という表記を見かけて混乱するかもしれません。「制震」「制振」と漢字表記は異なるものの、どちらも制震ダンパーを設置する構造で、両者の違いは曖昧なのが実情です。
建築業界ではエネルギーの大きさを基準とし、主に以下のように使い分けられる傾向にあるようです。
<制震構造>
高層ビルや高層マンションのような、比較的大きな建物にかかる振動エネルギーを吸収する構造が該当します。
<制振構造>
戸建て住宅やアパートなど、比較的小さな建物に取り入れられる構造を指すことが多いようです。
ただ両者に明確な定義はなく、「制震(制振)」と併記するケースも多く見受けられます。
制震構造以外にも地震に備える構造はある
地震に強い家の構造は、「制震(制振)」「耐震」「免震」の3つです。制震構造に加えて、耐震構造と免震構造についても押さえておきましょう。
耐震構造
家自体を頑丈にし、揺れに耐えられるよう設計された構造です。建築基準法によって定められている基本的な構造のため、戸建て住宅やアパート、マンション、ビルなど幅広い建物に取り入れられています。制震構造を導入する場合は、「耐震+制震」というイメージです。
免震構造
地面と建物の間に免震装置を設置する構造です。地面と建物が離れている上、免震装置が揺れを吸収するため、建物に伝わる揺れを大幅に軽減できます。
3種類の構造の中で、最も揺れを軽減できるとされるのが免震構造です。高層マンションやタワーマンションのような、比較的大規模な建物に取り入れられる傾向にあります。
各構造のメリット・デメリット比較表
制震(制振)構造・耐震構造・免震構造には、それぞれメリット・デメリットがあります。どれが良いか分からない場合は、各構造のメリット・デメリットを比較してみましょう。
構造 | メリット | デメリット |
---|---|---|
制震(制振) | ・耐震構造より揺れを抑えられる ・建物の損傷を軽減できる ・繰り返しの揺れに強い ・免震構造よりもコストを抑えられる ・後付けできる | ・地盤が弱いと導入が難しい ・耐震構造よりコストがかかる |
耐震 | ・震度6強~7でも倒壊しない強度がある ・コストを抑えられる ・工期が短い | ・他の構造より揺れを感じやすい ・繰り返しの揺れに弱い ・室内の家具が倒れやすい |
免震 | ・建物の揺れを大幅に軽減できる ・室内の家具が倒れにくい ・建物の損傷を軽減できる | ・3種類の中で最もコストがかかる ・数年に1回のメンテナンスが必要 ・後付けが難しい |
各構造の特徴や、制震構造のメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
制震ダンパーとは|耐震・免震との違いは何?メリット・デメリットも解説
制震構造は地震の揺れに強い
制震(制振)構造は、制震ダンパーを骨組み部分に設置する構造です。建物に伝わる揺れを軽減できるため、住人はもちろん家そのものも守ってくれます。
耐震構造や免震構造と比較すると、制震構造は耐震構造より揺れを軽減でき、免震構造より低コストなのが魅力です。各構造のメリット・デメリットを把握しつつ、地震に強い家づくりを目指してはいかがでしょうか。
地震に強い家を購入したい人は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
“地震に強い家”の特徴や工法を解説!耐震・免震・制震の違いも知っておこう