制震ダンパーとは?効果を決める3つの条件と確かめ方

地震・耐震住宅性能・防災
&RESORT Life編集部
  1. 耐震に上乗せする制震ダンパーの価値は3つの条件で決まる
  2. 土台の条件は耐震等級3が先に確保されていること
  3. 根拠の条件は低減率の数字がどの試験で出たかを読めること
  4. 配置の条件は本数と位置が構造計算で決まり金物補強まで設計されていること
  5. 物件の説明で3条件を確かめる質問リスト
  6. 制震ダンパーのよくある質問
  7. 耐震等級3に制震を組み合わせた住宅を選ぶために

制震ダンパーは壁の中で揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形を小さくする装置で、付けても耐震等級や地震保険の割引は原則として変わりません。

付ける価値は、耐震等級3の土台・低減率の試験条件・構造計算で決めた配置の3つがそろっているかで決まります。

条件を確認せずに制震付きという表記を物件の差として評価すると、根拠を見ないまま費用を払うことになりかねません。

本記事では、制震ダンパーの仕組みと3条件の確認方法を解説します。 物件の説明でそのまま使える質問リストも用意しているので、ぜひ参考にしてください。

耐震に上乗せする制震ダンパーの価値は3つの条件で決まる

制震ダンパーを付ける価値があるかは、土台・根拠・配置の3条件がそろっているかで判断しましょう。

「制震ダンパーは意味がない」と言われるのは、耐震性が足りない家に付けた場合や、本数と位置を計算せずに付けた場合です。

どちらも、この記事で扱う3つの条件のどれかが欠けています。

制震ダンパーは、建物の中で揺れのエネルギーを吸収し、変形を小さくする装置です。建物の強さそのものの代わりにはならないので、耐震性の確認が欠かせません。

3つの条件ごとに満たしたい水準と確認先は、次のとおりです。

条件 満たしたい水準 確認する書類・聞く相手 見る項目
土台 耐震等級3が確保されている 建設住宅性能評価書(新築)/建築年と性能表示の有無(持ち家) 構造の安定の耐震等級
根拠 低減率がどの試験で出たかを説明できる 販売担当者/メーカーの試験資料 比べた相手の耐震等級・入力した揺れ・実大か模型か
配置 本数と位置を構造計算で決め、金物補強まで設計している 設計担当者/構造計算書と図面 ダンパーの本数と位置・柱の引き抜きに備える金物

物件を比べるときは、まず土台の耐震等級3を確認してください。等級3が欠けている物件では、根拠や配置を比べても判断材料になりません。

制震ダンパーのデメリットは次の4つです。

  • 新築では数十万円程度の追加費用がかかる
  • 付けても耐震等級と地震保険の割引は原則として変わらない
  • 本数と位置を構造計算で決めないと効果が出ず、逆効果になる場合もある
  • 地盤が軟らかいと、製品の特性によっては効果が出にくい場合がある

どれもこの記事の3つの条件で確かめられます。

揺れのエネルギーを熱に変えて建物の変形を小さくする仕組み

制震ダンパーは、壁の中で揺れのエネルギーを熱に変えて吸収し、柱や梁の変形を小さくする装置です。メーカーによっては、「制振ダンパー」ともいわれています。

柱や梁が大きくゆがむほど、建物が受けるダメージは大きくなります(出典:コンパクト住宅需要の拡大に対応、住宅用制震ダンパー「MIRAIE S」を発表|住友ゴム工業)。損傷を減らすには、揺れ幅そのものを抑えることが欠かせません。

ゴムを使う製品では、揺れで壁がゆがむたびに内部の特殊なゴムが伸び縮みし、動きのエネルギーを熱に変えます(出典:制震・TRCダンパーとは|木造住宅用制震システム TRCダンパー住友理工株式会社)。

耐震・制震・免震は揺れへの対処の仕方が違う|制震は耐震と組み合わせて使う

制震は耐震の代わりにはならず、耐震で確保した強さに上乗せして使う装置です。

耐震は建物の構造そのものを強くして揺れに耐え、制震は装置で揺れを吸収し、免震は地面との間で揺れを建物に伝えにくくします(出典:震災10年特集コラム「制振ダンパー」|材料のチカラ|NIMS)。

3つの対策の違いと制度上の扱いは、次のとおりです。

対策 揺れへの対処の仕方 制度上の評価(耐震等級・地震保険)
耐震 柱・梁・壁を強くして揺れに耐える 耐震等級1〜3で評価される/地震保険の割引区分あり
制震 壁の中の装置で揺れのエネルギーを吸収する 独立した評価区分なし/地震保険の割引区分なし
免震 建物と地面の間の装置で揺れを伝えにくくする 免震建築物として表示され耐震等級は評価しない/地震保険の割引区分あり

(出典:地震などに対する強さ(構造の安定)|一般社団法人住宅性能評価・表示協会/地震保険制度の概要|財務省)

免震は建物と地面の間に装置を入れる工事が要るため費用が高く、戸建て住宅での採用は限られます。

制震は壁の中に装置を入れるので、免震より費用を抑えて耐震に上乗せできます。

耐震等級は建築基準法と同じ水準を等級1とし、等級2はその1.25倍、最上位の等級3は1.5倍の地震の力に耐える強さです。制震には等級の区分がありません。

下記の記事では、建売住宅の地震対策について解説しているので、併せて読んでみてください。

建売住宅の地震対策|耐震・制震・免震の選ぶ順番と3つの確認軸

繰り返す地震で損傷がたまるのを抑えるのが制震の役割

制震の役割は、繰り返す揺れで建物に損傷がたまるのを小さく抑えることです。

熊本地震では、2016年4月14日と16日に熊本県益城町で震度7を2回観測しました。同じ観測点で2日のうちに震度7が2回起きたのは、気象庁の観測史上初めてのことです。

本震のあとも揺れが続くと、接合部の緩みや釘・ビスの損傷がたまり、建物の耐力は落ちていきます(出典:14回の加振に耐えた制震性能|住友ゴム工業)。

制震装置は、揺れのエネルギーを吸収し、骨組みが受けるダメージを減らすために上乗せする装置です。

土台の条件は耐震等級3が先に確保されていること

制震ダンパー付きの物件を検討している方は、制震の有無より先に耐震等級3が確保されているかを確認してください。

倒壊を防ぐ強さは耐力壁で確保するもので、制震ダンパーは損傷の蓄積を抑える上乗せの役割にとどまります。

耐震等級の評価や地震保険の割引にも、制震の有無は原則として反映されません。

制震ダンパーを付けても耐震等級と壁量は原則として上がらない

制震ダンパーを付けても、耐震等級と壁量は原則として上がりません。

壁量に数えられるのは、建築基準法施行令46条と告示に定める仕様の壁か、国土交通大臣の認定を受けた壁です。壁倍率は、壁に水平の力を正負交互に繰り返し加える試験で測った耐力から決まります(出典:HOWTEC 構造試験室の業務案内|公益財団法人日本住宅・木材技術センター)。

試験で見るのは壁が耐えられる力の大きさなので、制震ダンパーが担う揺れのエネルギーの吸収は評価に入りません。

大臣認定を取得している制震ダンパーは、ダンパーを組み込んだフレーム構造全体が耐力壁として認められており、認定された壁倍率の範囲で壁量の計算に含められます。

揺れのエネルギーを吸収する性能が、そのまま壁の強さに換算されるわけではありません。

2025年4月に施行された改正で、必要な壁量は木造建築物の仕様の実態に応じて算定する方式に見直されました。改正前の基準を使える経過措置は2026年3月で終わり、現在の新築は改正後の基準で設計します(出典:木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準について|国土交通省)。

新しい基準を満たす新築でも、建築基準法の最低ラインにとどまり、等級3と同じ意味にはなりません。

壁量の基準を満たすという説明だけで、等級3と判断しないようにしましょう。地震に強い間取りの見分け方について、下記の記事で解説しているので、併せて参考にしてみてください。

地震に強い家の間取りの見分け方|図面で確認する2つのポイント

地震保険の割引は耐震等級と免震が対象で制震の区分はない

制震ダンパーを付けても、地震保険の割引は受けられません。

割引は免震建築物・耐震等級・耐震診断・建築年の4種類で、制震装置を付けた建物を対象にした区分はありません(出典:地震保険制度の概要|財務省)。割引ごとの割引率と対象の条件は、次のとおりです。

割引の種類 割引率 対象の条件
免震建築物割引 50% 品確法でいう免震建築物である
耐震等級割引 等級3:50%/等級2:30%/等級1:10% 品確法の住宅性能表示基準による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を持つ
耐震診断割引 10% 地方公共団体などによる耐震診断や耐震改修の結果、建築基準法の耐震基準を満たす
建築年割引 10% 1981年6月1日以降に新築された

(出典:地震保険制度の概要|財務省)

制震ダンパー付きの家でも、割引率を決めるのはダンパーの本数や性能ではなく耐震等級です。等級3なら50%、等級1なら10%と、耐震等級の違いで割引率に40ポイントの差が出ます。

割引は建物と家財の両方の保険料にかかりますが、複数の割引は重ねて使えません。割引を受けるには、保険会社が定める確認資料の提出が必要です。耐震等級を示す書類は、購入後も手元に保管しておきましょう。

熊本地震では耐震等級3の木造住宅の被害が小さかった

2016年(平成28年)の熊本地震では、住宅性能表示制度で耐震等級3を取得していた木造住宅16棟のうち、倒壊・崩壊は0棟でした(出典:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書|国土交通省)。

16棟のうち14棟は無被害で、残る2棟も軽微または小破の被害にとどまっています。益城町の中心部で被害が大きかった地域の木造住宅をすべて調べた結果では、建築時期と耐震等級ごとの倒壊・崩壊の割合は次のとおりです。

区分 調査棟数 倒壊・崩壊 割合
1981年5月以前(旧耐震) 759棟 214棟 28.2%
1981年6月〜2000年5月 877棟 76棟 8.7%
2000年6月以降 319棟 7棟 2.2%
耐震等級3(住宅性能表示) 16棟 0棟 0%

(出典:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書|国土交通省)

2000年6月以降の基準で建てた住宅でも2.2%が倒壊・崩壊しており、基準を満たすだけでは被害を防ぎきれません。

震度7が2回観測された地震で、被害の差としてはっきり表れたのは耐震等級の違いです。制震付きの物件を比べる前に、耐震等級3かどうかを確認しましょう。

新築の物件は住宅性能評価書の種類と耐震等級を確認する

新築の物件は、耐震等級3の根拠となる書類を確認してください。

耐震等級3を示す書類には、住宅性能評価書と許容応力度計算書(構造計算書)があります。住宅性能評価書は2種類あり、検査する段階が次のように違います。

評価書 評価する段階 確認できること
設計住宅性能評価書 設計段階の図面 等級3で設計されたか
建設住宅性能評価書 工事中と完成時の現場検査 評価を受けた設計どおりに施工されたか

(出典:住宅性能表示制度Q&A(消費者向け)|一般社団法人住宅性能評価・表示協会)

建設住宅性能評価書が交付された住宅なら、裁判によらず住宅の紛争を扱う指定住宅紛争処理機関を1件1万円で使えます(出典:住宅紛争審査会の取り扱う紛争|住まいるダイヤル/「安心」がなによりです|一般社団法人住宅性能評価・表示協会)。

住宅性能表示制度の利用は任意なので、評価書を取らずに許容応力度計算書を納品し、「耐震等級3相当」とする住宅会社もあります。

しかし、評価書がなくても構造計算書があれば等級3の根拠を確かめられるので、評価書の有無だけで候補から外す必要はありません。販売担当者には、次の3点を順に確認しましょう。

  • 等級3の根拠は、設計住宅性能評価書と許容応力度計算書のどちらか
  • 評価書がある場合、建設住宅性能評価書まで交付されるか
  • 計算書の場合、許容応力度計算による等級3相当か、計算書を見せてもらえるか

「等級3相当」の物件は、評価機関による図面の審査や現場検査を受けていない点も知っておきましょう。下記の記事では、耐震等級3の建売住宅について、信頼性と購入前の確認ポイントをまとめているので、ぜひ読んでみてください。

建売の「耐震等級3」は信頼できる?購入前に確認する3つのポイント

持ち家は建築年と性能表示の有無から確認する

持ち家の耐震性は、建築年で区分を決め、性能表示の評価書で耐震等級を確認します。

建築年ごとに、あわせて確認することは次のとおりです。

建築年 あわせて確認すること
1981年以前 耐震診断で現状の耐震性を知る
1981〜2000年 接合部が2000年に明確化された仕様に合っているか
2000年以降 性能表示で取得した耐震等級

1981年以前に建てた旧耐震基準の建物は耐震性が足りないものが多く、国は所有者に耐震診断で自宅の耐震性を知るよう勧めています(出典:建築:住宅・建築物の耐震化について|国土交通省)。

1981〜2000年に建てられた在来軸組構法の住宅は、接合部の規定が明確になる前の建物です。熊本地震では、新耐震基準でも倒壊などの被害が出ました(出典:報道発表資料:新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法の公表について|国土交通省)。

2000年以降の住宅でも、耐震等級は1〜3で強さに差があります。性能表示を利用していない住宅では、等級を書類で確認できません。

持ち家に後付けするときは耐震診断と補強を先に済ませる

持ち家にも製品によっては制震ダンパーを後付けできますが、先に耐震診断を受け、必要な補強を済ませてから付けます。

後付けできるかどうかと付けられる位置は製品ごとに設置の条件が違い、すべての住宅に付けられるわけではありません。

今の耐震基準を満たしていない可能性がある住宅は、耐震診断の結果によって補強工事が先に必要になり、その分の工期と費用が増えます。

製品を選ぶときは、住宅の工法が在来工法かツーバイフォーかと、付けたい壁に合う製品かを確認してください。

新築時に組み込めば、構造計算と一緒にダンパーの位置と本数を決められます。

根拠の条件は低減率の数字がどの試験で出たかを読めること

制震ダンパーの低減率は、どの試験で出た数字かを確認してから比較の材料にしましょう。

比べた相手・入力した揺れ・試験体は製品ごとに違い、数字の大小だけでは製品の優劣を決められません。数字を読む際に最初に確認したいのは、同じ耐震等級の建物どうしを比べた値かどうかです。

あわせて、ダンパーの方式ごとに効き始める揺れの大きさと、業界団体が制震装置として扱う性能の線引きも押さえておきましょう。

製品どうしを比べるときは、方式と作動条件、壁倍率の大臣認定の有無、低減率を出した試験の条件、保証期間と保証の条件の4つを並べましょう。

方式ごとに効き始める揺れの大きさが違う

制震ダンパーは、エネルギーを吸収する方式ごとに効き始める揺れの大きさが違います。

鋼材や摩擦を使い、部材が変形した量に応じて揺れを吸収するのが変位依存型です(出典:制振ダンパーは意味がないのか?地震対策の疑問について解説|evoltz)。

オイルや粘性体を使う速度依存型は、変形する速さに応じて抵抗し、ゆっくりした揺れから速く細かい揺れまで吸収します(出典:制振ダンパーは意味がないのか?地震対策の疑問について解説|evoltz)。

住宅でよく使われる3つの方式の違いは、次のとおりです。

方式 エネルギーを吸収する仕組み 効き始める揺れの傾向
オイル(速度依存型) ピストンが動いてオイルが移動するときの圧力で吸収する 小さな揺れから大きな揺れまで
ゴム(粘弾性) ゴムやシリコンの弾力で振動を吸収する 微小な変形から大きな変形まで
鋼材(変位依存型) 金属が曲がるときに生じる熱に変えて吸収する ある程度の力で金属が曲がってから
摩擦(変位依存型) 部材どうしがすべるときの摩擦の抵抗で吸収する 一定の力を超えて部材がすべり始めてから

(出典:制震(制振)ダンパーの種類(オイル・粘弾性・鋼材)を比較・解説|トキワシステム/機関誌GBRC175号技術報告|日本建築総合試験所/制振ダンパーは意味がないのか?地震対策の疑問について解説|evoltz)

鋼材の方式は、ある程度の力で金属が曲がるまで働かないため、小さな揺れには効果を発揮しません。付いているダンパーがどの大きさの揺れから働くかは、メーカーが公表している作動条件で確認しましょう。

低減率は比べた相手・入力した揺れ・試験体で変わる

広告に載る低減率は、比べた相手・入力した揺れ・試験体の条件ごとに大きく変わります。

「ダンパーなし」とされる試験体には、ダンパーを付けた位置に代わりの耐力壁が入っていない場合があります。代わりの耐力壁がない条件では、低減率にダンパーの効果と耐力が足りない分の差が混ざり、両者を切り分けられません。

同じ等級どうしを比べた例として、制震装置のメーカーが自社の製品を付けて2026年に公開した、実大の木造住宅の骨組み2棟を同時に揺らした実験があります。

能登半島地震を想定した震度6強〜7相当の4回目の揺れで、耐震等級3のみの棟は82mm変形して安全限界に達し、ダンパーを足した棟は36mmでした(出典:「富山振動台実験2026」を開催|株式会社evoltz(PR TIMES))。

耐力をそろえたうえでの差なので、ダンパーの効果として読める数字です。低減率を見るときは、次の3点を確認してください。

  • 同じ耐震等級の骨組みどうしを比べた値か
  • 告示で定めた揺れか観測された地震の揺れか
  • 実大の試験体か縮小模型か

1つ目の答えが出ない数字は、耐力不足の差が混ざっている可能性を消せないため、製品同士を比べる材料からは外しておきましょう。

業界団体のマニュアルは耐力壁と同等以下の製品を制震装置として扱わない

制震ダンパーと名の付く製品でも、耐力壁と変わらない性能のものは、業界団体のマニュアルでは制震装置として扱いません。

日本免震構造協会が2024年7月に発行した住宅制振設計マニュアルは、木造戸建て住宅の制震の試験法・評価法・設計法をまとめたものです(出典:出版物|一般社団法人日本免震構造協会)。

マニュアルが示す評価の考え方は、次のとおりです。

  • 大地震のときの変形角を1/75rad以内に抑えることが目標
  • 目標を満たすのに必要な本数で、装置を区分1〜3に分類
  • 耐力壁と同等かそれに届かない性能の区分1は、制震装置として扱わない

(出典:【徹底解説】住宅制振設計マニュアルとevoltz制振装置の最前線|evoltz)

変形角は柱が傾く角度で、1/75radは高さ3mの柱の頭の傾きを4cmに収める水準です。ただし、区分2と区分3の差は目標に届くまでの本数で、松竹梅のような序列ではありません。

マニュアルは国の基準ではなく1団体の指針なので、区分の回答がない製品を法令違反とみなす根拠にはなりません。制震ダンパー付きの物件では、製品がどの区分に当たるかを販売担当者に確認しておきましょう。

配置の条件は本数と位置が構造計算で決まり金物補強まで設計されていること

製品の性能を確認できても、制震ダンパーは付ける場所と本数を構造計算で決め、接合部の金物補強まで設計しなければ効果を発揮しません。

配置を誤ると、効果が出ないだけでなく逆効果になる場合もあります。配置・金物・本数の3点は、図面と計算書で確認しましょう。

置く場所を構造計算で決めないと逆効果になる場合がある

制震ダンパーは、本数と位置を構造計算で決めることが大切です。

置く位置が偏ると建物の強度のバランスが崩れ、かえって悪影響になる場合があります(出典:制震ダンパー(制振ダンパー)のデメリットとメリット|日本制震システム)。本数を増やせば効くわけではない点にも、注意が必要です。

住友理工のTRCダンパーは、4分割法を使って建物のX・Y方向にバランスよく配置する設計です。同社は、高層ビルの設計に使う地震応答解析に告示波を入力して、ダンパーの効果を検証しています(出典:設計・施工について|住友理工株式会社)。

間取りの段階で壁の量と釣り合いを検討し、そのうえで許容応力度計算を行うのが、配置を決める手順の一例です。

また、軟弱地盤では建物の揺れが長周期化しやすく、ダンパーの特性次第で十分な減衰効果を発揮しにくい場合があるため、地盤の条件もあわせて確認してください(出典:制震ダンパー(制振ダンパー)のデメリットとメリット|日本制震システム)。

ダンパーが柱を引き抜く力に金物で備える

制震ダンパーを付けると柱の接合部に引き抜き力が生じるので、金物による補強が欠かせません。

メーカーは、N値計算用の壁倍率を使い、告示1460号に基づく金物で接合部を補強するよう求めています(出典:設計・施工について|木造住宅用制震システム TRCダンパー|住友理工株式会社)。

ダンパーが壁量に入らない扱いの製品でも、接合部の金物の計算には、ダンパーの引き抜き力を加えるのが前提です。

計算は木造の継手及び仕口の構造方法を定める件(建設省告示第1460号)に沿って進め、柱ごとに必要な金物を決めます。

物件の説明では、ダンパーの引き抜き力を入れて金物を計算したかと、どの金物で補強したかの2点を聞いてください。

費用は本数で決まり新築では数十万円の追加になる

新築に制震ダンパーを付けると、数十万円程度の追加費用がかかるケースが多くあります(出典:制震ダンパー(制振ダンパー)のデメリットとメリット|日本制震システム株式会社)。

総額は、1本あたりの単価と本数の掛け算で決まるので、単価は見積書の数字で確認してください。見積もりで確認する内容は、次のとおりです。

費用を左右する要素 確認する内容
1本あたりの単価 定価か販売店が決めた価格か・税別か税込か
本数 構造計算と配置の検討で決めた本数か・延べ床面積と積雪の条件
施工費 取り付けの費用と金物の補強費が単価に含まれているか

建物の重量や積雪量、構造計算と配置の検討により、同じ製品でも最終的な本数は変わります。

物件の説明で3条件を確かめる質問リスト

購入前に制震ダンパーの3条件を確認するなら、販売会社に次の6つを質問しましょう。

答えを書類や番号で示せるかどうかで、説明の根拠の厚みを見分けられます。口頭で「効果があります」と返ってくるだけでは、土台・根拠・配置のどこが欠けているかを判断できません。

質問と、答えとして出してもらう書類は次のとおりです。

条件 質問 確認する書類・答え
土台(評価書の種類) 耐震等級3は、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価のどちらで取得していますか 住宅性能評価書(設計と建設のどちらの評価書かと、構造の安定の欄の耐震等級3)
根拠(比べた相手と試験の条件) ◯%低減は、同じ耐震等級の建物と比べた値ですか 比べた相手・入力した地震波・実大か模型かが載った試験資料
根拠(第三者評価・大臣認定) 大臣認定や公的機関の技術評価を受けていますか 認定番号・評価番号(新築は壁倍率の大臣認定、リフォームは耐震診断の評点に数える技術評価)
配置(本数と位置) 本数と位置は、どの計算で決めましたか 地震波を入力した時刻歴応答計算の結果とダンパー配置図
配置(金物補強) ダンパーを付けた壁の柱頭・柱脚の金物は、どう選びましたか N値計算書、または告示の表で選んだ接合金物の一覧
保証(保証期間と耐用年数) ダンパーの保証期間と、耐用年数の根拠は何ですか 保証書(期間と対象)と耐用年数の試験資料

6つのうち書類で答えられない項目が多い物件では、制震ダンパー付きという表示を他の物件との差として数えずに比べてください。

柱の上下の接合方法は平成12年建設省告示第1460号が定めており、ダンパーを付けた壁の金物も同じ告示に沿って選びます。

耐用年数と保証期間は別物です。促進劣化試験で推定した耐用年数が長くても、保証書に期間の記載がなければ、不具合時に無償で直してもらう根拠にはなりません。

新築の売主が負う10年の瑕疵担保責任は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分が対象です(出典:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(資力確保指導係)|国土交通省中部地方整備局)。

ダンパーの不具合がこの10年の対象に入るかどうかも、保証書とあわせて確認しておきましょう。

制震ダンパーのよくある質問

耐震等級3の家でも制震ダンパーには損傷を抑える意味があり、点検不要の製品が多く、ツーバイフォーにも専用品があります。

Q1:耐震等級3の家なら制震ダンパーはいらない?

耐震等級3の家でも、制震ダンパーが不要とはいえません。

耐震等級3が示すのは、数百年に一度程度の大地震で倒壊しにくいことです(出典:地震などに対する強さ(構造の安定)|一般社団法人住宅性能評価・表示協会)。変形による損傷の小ささまでは示していない点に注意が必要です。

損傷のしにくさを示す等級は別にあり、想定する揺れは数十年に一度程度、東京では震度5強に相当します(出典:地震などに対する強さ(構造の安定)|一般社団法人住宅性能評価・表示協会)。

損傷を抑えたい場合は、制震の併用を検討してみてください。

Q2:制震ダンパーの耐用年数とメンテナンスは?

制震ダンパーは点検なしで使える製品が多く、耐用年数と保証期間は製品ごとに違います。

設置後は壁の中へ納まって見えなくなることから、メンテナンスをしなくても制震の効果を損なわない設計にしている製品があります(出典:よくあるご質問|evoltz/よくあるご質問|住友ゴムのMIRAIE)。

耐用年数の数字は、どれもメーカーが自社の促進劣化試験や作動試験で出した値です。

製品保証の期間は10年から120年まで開きがあり、指定の施工方法での取り付けと施工報告書の提出を保証の条件にする製品もあります(出典:木造住宅の制震ダンパー αダンパーExⅡ|トキワシステム)。年数と条件は、セットで比べてください。

物件の説明を受けるときは、付いているダンパーの保証年数と保証を受ける条件を聞きましょう。

Q3:ツーバイフォーの家にも付けられる?

ツーバイフォー(枠組壁工法)の家にも、専用の制震ダンパーを付けられます。

注意したいのは、ダンパーを取り付けた面材耐力壁の壁量を0として扱う製品があることです(出典:設計・施工について|木造住宅用制震システム TRCダンパー|住友理工株式会社)。

壁量が0になった分は、ほかの耐力壁を増やして補う設計が必要になります。壁量は、地震の横からの力に耐える壁の合計であるためです。

耐震等級3に制震を組み合わせた住宅を選ぶために

耐震等級3に制震を組み合わせた住宅を選ぶときは、等級3の土台を確認したうえで、制震の根拠と配置を比べることが大切です。

新築の場合は、低減率が同じ耐震等級の建物と比べた値か、本数と位置を構造計算で決めたかまで、購入前に書類と説明で確認できます。

アイム・ユニバースは2016年以降、全棟に制震装置を標準搭載しています。戸建ては耐震等級3を取得したうえで、制震を併用する仕様です。また、アイム・ユニバースの耐震等級3は、設計住宅性能評価で取得しています。

取得している等級には、倒壊のしにくさ(構造躯体の倒壊等防止)と損傷のしにくさ(構造躯体の損傷防止)の両方の等級3があります。

物件によっては設計住宅性能評価に該当しない場合があるため、検討する物件ごとに評価書の有無を確かめてください。

AIM DAMPER(アイムダンパー)とは、耐震と制震機能を併せ持ち、耐震壁としても高い効果を発揮する、アイム・ユニバース独自の制震ダンパーです。ダンパー部分のスライドによる摩擦抵抗により揺れを抑えます。

震度3〜4程度までは耐震壁として働き、それを超える揺れではダンパー部分がすべって摩擦で揺れを吸収します。

アイムダンパーは数々の厳しい試験や審査をクリアし、壁倍率3.3倍(AIM DAMPER AⅢは4倍)の国土交通大臣認定の製品として認められました。
※AIM DAMPERかAIM DAMPER AⅢのいずれかを導入しています。

アイムダンパーについて詳しく見る

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