賃貸併用住宅とは?かかる費用と家賃収入の収支例やメリット・デメリットを解説

コラム

賃貸併用住宅とは、居住スペースと賃貸スペースが1つの建物内に共存している構造の家。住みながら家賃収入を得られるのが大きなメリットですが、建築を考えた際は初期費用やランニングコストを含めた収支計画を立てておくことが大切です。

今回は賃貸併用住宅の費用とメリット・デメリット、注意点などを紹介します。

賃貸併用住宅とは?特徴と注目される理由

賃貸併用住宅とは、居住スペースと賃貸スペースが共存した家を指します。2階建ての場合はどちらかのフロアに自分たちが住み、もう片方を他人に貸し出すイメージです。その特徴から「自宅兼アパート」「賃貸付き住宅」とも呼ばれます。

昨今、賃貸併用住宅は家賃収入や節税といった金銭面でメリットがあるとして、家の購入を考えている人から注目を集めています。

しかし、いくつかの注意点もあるため、次の章から紹介する費用と収支、メリット・デメリットなどを把握した上で、総合的に判断していきましょう。

賃貸併用住宅の建築・維持にかかる費用と収支例

賃貸併用住宅の建築で後悔しないコツは、家賃収入だけではなく初期費用やランニングコストも把握しておくこと。建築後のイメージを膨らませるために、費用と収支例をチェックしていきましょう。

建築時にかかる「初期費用」
家を建てる際の初期費用は、広さや設備などによって異なりますが、今回は「3LDKの住宅を坪単価70万円程度で建てられる場合」を例に見ていきます。

1フロア25坪で2階建てを想定すると、延べ床面積は50坪です。つまり、建築費は「50坪×70万円=3,500万円」。ここに造成工事にかかる費用や、各種手続き・保険にかかる諸費用なども加わります。

項目費用の目安
建築費3,500万円
造成費250万円
諸費用150万円
合計3,900万円

住宅の維持・管理にかかる「ランニングコスト」
賃貸併用住宅は建てて終わりではなく、保有・経営している限りは以下のようなランニングコストが発生します。

<一例>
・固定資産税
・都市計画税
・修繕費
・地震・火災保険料
・管理会社へ支払う管理委託手数料

家賃収入を踏まえた収支例
延べ床面積が50坪の賃貸併用住宅のうち、25坪のワンフロアを15万円/月で貸した場合の収支例は次の通りです。

項目費用
住宅の購入価格3,900万円
ローンの融資額3,000万円
家賃収入15万円/月
ローン返済額10万円/月
修繕などの積立金1万円/月
固定資産税5万円/年

上記の条件で計算すると、毎月の収入は「15万円(家賃収入)-10万円(ローン返済額)=5万円」となり、年間60万円の利益が発生します。固定資産税の5万円を引くと55万円、ここからさらに所得税や住民税が引かれることを考えても、数十万円は利益として手元に残るでしょう。

賃貸併用住宅のメリット4つ

賃貸併用住宅には金銭面に加え、ライフステージに合わせた活用というメリットもあります。

すでに保有している人の成功例から見えてくる保有・経営のカギは、賃貸併用住宅ならではのメリットを最大限に活かすこと。実際にどんなメリットがあるのか、具体的にチェックしていきましょう。

1. 住宅ローンを利用できる
通常、賃貸アパート・マンションを購入する際はアパートローンが適用されますが、賃貸併用住宅であれば住宅ローンが利用できます。金利の相場はアパートローンが1~5%程度なのに対し、住宅ローンは変動金利だと1%未満です。

金利の低さは利子の少なさを意味します。つまり、住宅ローンが適用される賃貸併用住宅であれば、賃貸アパート・マンションよりも月々の支払いを抑えられる可能性が高まります。

なお、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには「総床面積に対し、自宅スペースの床面積が50%以上」という条件があるので、建築を考える際は注意しましょう。

2. 住宅ローンの返済に家賃収入を充てられる
通常の一戸建てだと住宅ローンの返済を全額賄う必要があります。一方、賃貸併用住宅なら家賃収入を返済に充てられるので、家計の負担を軽減できるでしょう。

3. 節税に期待できる
賃貸併用住宅は、以下のような理由から相続税・固定資産税の節税に期待できます。

<相続税>
・賃貸スペースの評価額は居住スペースよりも2割程度下がる
・要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用される

<固定資産税>
・戸数に応じて軽減措置を受けられる

4. ライフステージの変化に合わせられる
賃貸併用住宅はライフステージの変化に応じた活用方法ができる点も魅力です。最初は賃貸併用住宅として運用し、家族の成長や変化に応じて以下のように用途を変更できます。

<例>
・子どもが成長したら賃貸の一部屋を子ども部屋にする
・親が高齢になったら二世帯住宅にする

賃貸併用住宅のデメリット4つ

家は大きな買い物です。建築後に「失敗した…」とならないよう、賃貸併用住宅のデメリットも把握しておきましょう。

1. 入居者とのトラブルが発生することも
賃貸併用住宅はアパート・マンションと違い、オーナーも同じ建物内で生活します。別のフロアや部屋に他人が住んでいることで、音や生活スタイルに関するトラブルが発生するリスクが生じます。

また、入居者同士のトラブルが発生した際は、仲裁を求められる可能性もあるでしょう。

2. 部屋が埋まらないと利益は発生しない
賃貸併用住宅の経営を始めても、借り手がいないと家賃収入は発生しません。家賃収入ありきの収支計画を立てている場合、空き部屋が続くと資金ショートのリスクが高まります。

3. 建築コスト・借入金が高くなりやすい
賃貸併用住宅は賃貸スペースを設ける分、通常の一戸建てよりも建築コストがかかります。住宅ローンの借入金も高くなりやすく、毎月の返済額が負担になる可能性が考えられます。

4. 売却しづらい
売却を考えたとき、賃貸併用住宅だと買い手が見つからなかったり、予想以上に時間がかかったりすることが想定されます。

その理由は住宅の構造にあります。賃貸併用住宅は居住スペースと賃貸スペースが共存しているため、通常の一戸建てを望む人や、アパート経営を考える人に選ばれにくいのです。

ただ、立地や間取り、価格帯などを工夫すれば買い手が見つかりやすくなるかもしれません。

賃貸併用住宅の建築・経営スタートまでの流れ

賃貸併用住宅の建築・経営には、主に6つのステップがあります。流れを簡単に把握しておきましょう。

<流れ>
1. 賃貸併用住宅を建てる土地を探す・調べる
2. ハウスメーカーに相談、プランニングしてもらう
3. 契約を結ぶ
4. 建築工事がスタートする
5. 入居者を募集する
6. 建物が完成、入居する

1. 賃貸併用住宅を建てる土地を探す・調べる
まずは土地探しから始めます。先々のことを想定し、さまざまな観点からリサーチしましょう。

<例>
・賃貸併用住宅を建てられる土地か
・どの程度の住宅を建てられるか
・交通の便は良いか
・ニーズはあるのか

2. ハウスメーカーに相談、プランニングしてもらう
土地に目星をつけたら、依頼するハウスメーカーを探して相談します。希望する間取りや設備などを伝え、具体的にプランニングしてもらいましょう。

3. 契約を結ぶ
提示されたプランや費用に納得できたら契約を結びます。契約後は金融機関で住宅ローンの審査を受け、通過後に着工金を支払うのが一般的です。

4. 建築工事がスタートする
着工金の支払いが完了したら、いよいよ建築工事のスタートです。建築期間は住宅の大きさや建築方法によって異なりますが、早いと4ヵ月程度、長いと1年近くかかることもあります。

5. 入居者を募集する
建築中から入居者の募集を開始します。入居可能日を建物の完成予定日に合わせると、経営をスムーズに始められるでしょう。

6. 建物が完成&入居する
建物が完成したら残金を支払い、引き渡しを受けます。オーナーと入居者の引っ越しが完了したら、賃貸経営の本格的なスタートです。

賃貸併用住宅の注意点を踏まえた計画づくり

賃貸併用住宅の経営を成功させるには、事前の計画設計が重要です。注意点を踏まえた計画づくりのコツを紹介します。

引っ越しの可能性を含めて慎重に考える
住宅ローンの利用は契約者の居住が必須条件です。単身赴任や親の介護など、やむを得ない事情で契約者が家を離れる場合、家族が引き続き住むのであれば問題ないケースもあります。

しかし、家族全員が引っ越す場合は契約違反とみなされ、一括返済を求められる可能性があるので注意が必要です。引っ越しの可能性を含めて慎重に検討しましょう。

ニーズのある立地・間取り・家賃設定にする
賃貸併用住宅で安定した家賃収入を得るには、空き部屋をつくらないことが大切です。土地を探す際は立地や交通の便に加え、間取りや家賃などのニーズを周辺の賃貸物件から探っていきましょう。

信頼できる管理会社を選ぶ
賃貸併用住宅の経営では、建物や入居者の管理も重要な業務です。管理方法は主に「自主管理」「サブリース」「管理委託」の3種類で、それぞれ特徴は異なります。

種類概要
自主管理すべての管理業務を自分で行う
サブリースサブリース会社が借り上げて管理する
管理委託管理業務を管理会社に依頼する

サブリースや管理委託では大切な物件を預けるため、信頼性の高い会社選びが大切です。費用、管理している物件の入居率、口コミなど、多角的な視点から比較していきましょう。

賃貸併用住宅は将来を見据えた上で建てよう

 

賃貸併用住宅について調べていると、「やめとけ」「危険」というネガティブな意見を目にすることがあるかもしれません。今回紹介したように、空室のリスクやコスト面、引っ越し・売却のしづらさといった注意があるのは事実です。

しかし、賃貸併用住宅には金銭面やライフステージに合わせた活用方法といったメリットが複数あり、経営に成功している人も多く存在します。メリット・デメリットの両方を把握し、先々のことを想定した上で建築すれば、きっと満足のいく住宅と生活が手に入るでしょう。

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