日照権って何?一戸建ての近隣トラブルを避ける方法から解決法まで解説
高層マンションが建つ関係で、その周辺の住民が「日照権が侵害される」と抗議をする場面を見たことがある人は多いかもしれません。
このような日照権にまつわるトラブルは、高層マンションの建築のみならず、戸建て同士でも起こり得るといわれています。
そこで今回は日照権とは何か、また一戸建てを建てる際に日照権のトラブルを避ける方法や解決法を解説します!
一戸建てで気をつけたい日照権とは?
日照権とは、自分が居住する建物の日当たりを確保する権利を指します。しかし、日照権は法律で定められているわけではありません。
とはいえ日照権を守るための法律として、建築基準法で定められた「斜線制限」「日影規制」が設けられています。一戸建てを建築する際には、この2つの法律に気をつける必要があるのです。
では、具体的にどんな法律なのかチェックしていきましょう!
斜線制限
斜線制限とは建物同士の間に空間を設け、日照や採光、通風の妨げにならないよう建築物の高さを制限することです。斜線制限はさらに以下の3つに分類されます。
道路斜線制限 | 道路・道路上空の空間を確保するための制限。 道路にかかる日照や採光、通風などの保持が目的。 |
隣地斜線制限 | 高い建物との空間を確保するための制限。 隣接する土地にかかる日照や採光、通風などの保持が目的。 |
北側斜線制限 | 住宅地での日当たりを確保するための制限。 日が差さない北側の土地にかかる日照や採光、通風などの保持が目的。 |
日影規制
日影規制とは冬至(12月22日頃)を基準にして、一定時間以上の日影が生じないよう建築物の高さを制限することです。冬至を基準にしている理由は、一年で最も影が長くなる日だからです。
日影規制は、地方公共団体の条例によって「規制対象区域と規制値」などが定められています。
例えば「第一種・第二種低層住居専用地域」では、「高さ7mを超える物件あるいは地階を除く階数が3階建ての物件」が日影規制の対象です。
そのため、3階建ての一戸建てを建築する場合には、日影規制の対象となる可能性が高いため、確認した方が良いでしょう。
一戸建ての日照権トラブルを避ける方法
2つの法律に従って家を建てたとしても、日照権そのものが法律で定められているわけではないため、近隣トラブルが発生する場合があります。
例えばもともと空地だった南側に家を建てられた人が「日影ができた」と感じるのは当然でしょう。最悪の場合、補償金を請求されるケースもあるため、トラブルは避けたいものです。
ここからは、一戸建ての日照権をめぐるトラブルを避ける方法を紹介します。
居住予定の地域の日影規制を調べておく
事前に居住予定の地域の日影規制を調べておくようにしましょう。用途地域は全部で13種類、このうち住宅を建てられる用途地域は8種類です。
特に第一種・第二種低層住居専用地域は高さ7m以上の物件、あるいは3階建ての物件が日影規制の対象となるため注意しましょう。
増築の際は近隣への影響を把握しておく
新築に限らずサンルームを増築したり、2階から3階に増築したりする際にも、近隣への影響を把握しておきましょう。
なぜなら隣家との距離や位置関係によって、建物による日影の出方が変わってくるからです。
例えば建物が密集している場合、各建物の影が重なり合うため、北側に日影のできる時間が長くなります。
建築士とプランニングをしっかりする
事前に建築士とプランニングをしっかり行うのが重要なポイントです。
近隣の日当たりに十分配慮して家を建てたかどうかは、後のトラブルの発展を防ぐことにもつながります。
近隣の住民と良い関係を築いていくためにも、建築士と入念に話し合い、日当たりに配慮した家を建てることが重要不可欠です。
日照権で隣人トラブルに発展したときの解決法
万が一、日照権で隣人トラブルが起きた場合には、建築士に対応してもらうなどいくつか方法があります。
具体的に、どう対応していけば良いのか確認していきましょう。
初期段階の苦情は建築士に対応してもらう
建築を開始して初期段階で苦情が入った場合には、建築士に対応してもらうことをおすすめします。
建築士から詳しい概要をデメリットも含め誠実に説明してもらうことで、相手方に受け止めてもらえる可能性が高くなるからです。
できれば近隣の住民には、工事に着手する前に話をしておくのが理想的でしょう。
法の基準をクリアしていることを伝える
近隣から苦情が来た際には、日照に関する法の基準はクリアしていることを、相手側にはっきりと伝えましょう。
ただし、日照阻害の程度が明らかに受忍限度を超えている場合には、裁判へ発展するケースがあるため要注意です。判例などでよく耳にする受忍限度とは、生活妨害を受ける側が社会生活上我慢すべき限度を指します。
新築または増築する場合、法の基準に沿って建築することに加え、日照阻害の程度が受忍限度を超えないよう気をつけなければなりません。
住宅会社に間に入ってもらい話し合いをする
近隣の人が既に怒っていて対応しきれないときには、住宅会社に間に入ってもらっての話し合いをおすすめします。
建築基準法の範囲内で建てる点や日照時間を十分に確保できるよう配慮している点を、専門家の知見も交えながら伝えるのがベストです。
それでも裁判に発展しそうな場合には、不動産トラブルに対応してくれる相談窓口に問い合わせましょう。
日照権での近隣トラブルを避けるために事前準備をしっかりしよう!
日照権は居住場所の日当たりを確保する権利を指しますが、法律では定められていません。
しかし建築基準法に沿って建てるほか、日照阻害の程度が受忍限度を超えないようにしないとトラブルに発展する恐れがあります。
新築や増築の際には事前に居住予定地域の日影規制を調べたり、近隣への影響を把握したりなどの準備が非常に大切です。
万が一トラブルに発展してしまったときには建築士や住宅会社に間に入ってもらうことをおすすめします。
近隣の住民と長いお付き合いになるのを想定し、日照権でのトラブルが起こらないよう事前準備をしっかり行っていきましょう。