家の水害対策は浸水深で選ぶ|今すぐ・リフォーム・新築別の方法
家の水害対策は、ハザードマップの想定浸水深が0.5m未満の場合は出入口と排水口をふさぎ、0.5m以上のときは設備と家財を上げて早めに避難するのが基本です。
区域外や川から遠い家でも内水氾濫や下水の逆流で浸水することがあり、水が膝の高さ(0.5m)を超えると、ほとんどの方が避難困難になります。
本記事では、浸水リスクの調べ方から、大雨の前・リフォーム・新築の各段階でやる水害対策、火災保険の水災補償が支払われる条件までを解説します。
浸水深ごとの優先順位に沿って整理しているので、ぜひ参考にしてください。
屋上テラスのある家「&RESORT HOUSE」
家の水害対策と浸水深別の優先順位

家の水害対策は、想定浸水深が0.5m未満の場合は水を家に入れない対策を、0.5m以上のときは設備と家財を濡らさない対策と早めの避難を優先しましょう。
浸水深0.5mまでは大人の膝までつかる床下浸水、0.5〜1.0mは床上浸水で、2.0〜5.0mになると2階の軒下まで水が届きます。想定浸水深ごとの優先順位は、次のとおりです。
| 想定浸水深 | 浸水の程度の目安 | 優先する対策 | 取り組む時期 |
|---|---|---|---|
| 0.5m未満 | 床下浸水(大人の膝まで) | 出入口と排水口をふさぎ水を入れない | 大雨の前・リフォーム |
| 0.5m以上2.0m未満 | 床上浸水から1階の軒下まで | 設備と家財を高い位置へ移し早めに避難する | 大雨の前・リフォーム・新築 |
| 2.0m以上 | 2階の軒下以上まで浸水 | 浸水が始まる前に家の外へ避難する | 大雨の前・新築 |
※2026年11月時点
(出典:浸水深と避難行動について|国土交通省川の防災情報)
止水板や土のうは、浅い浸水を減らす手段です。しかし、床上まで水が届く想定の家では、出入口をふさぐだけでは床近くの家電や給湯器を守りきれません。
浸水深0.5m未満の家は出入口と排水口をふさぐ
想定浸水深が0.5m未満の家は、出入口と1階の排水口をふさぎ、水を家に入れない対策を優先しましょう。
0〜0.5mは床下浸水にあたり、水位は大人の膝までにとどまります。また、水の入り口は、玄関や勝手口のような出入口だけではありません。
床下の換気口も地面に近く、浸水が始まると早い段階で水が入る開口部です。玄関の前に水のうを隙間なく並べても、排水口を開けたままでは室内に水が上がってきます。出入口と換気口と排水口は、同時にふさいでください。
また、応急的にふさぐ場合は、浸水後の排水・換気・点検に支障が出ないよう早期に復旧しましょう。
浸水深0.5m以上の家は設備と家財を高い位置へ移す
想定浸水深が0.5mを超える家では、出入口をふさぐより、家電や設備を水につからない高さへ上げることが大切です。
床上まで来た水は止水板を越えて室内へ流れ込み、1階に置いた物は水位の高さまで浸かります。0.5mを超えると、床に近いコンセントや屋外の給湯器・室外機も水位より下に入る点に注意してください。
令和元年東日本台風では、内水氾濫で高層マンションの地下にあった高圧受変電設備が冠水し、停電でエレベーターと給水設備が使えなくなりました。
国はこの被害を受け、2020年6月に電気設備の浸水対策ガイドラインを公表しました(出典:報道発表資料:「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をとりまとめました|国土交通省)。
膝の深さを超える前に止水から避難へ切り替える
止水板や土のうで家を守る作業は、屋外の水が膝の深さ(約0.5m)に届く前に切り上げ、避難か上階への移動に切り替えます。
子どもや高齢の家族と逃げる家庭では、家族のうちいちばん背の低い方の膝を切り替えの基準にしてください。
家財や設備は浸水しても買い直せますが、膝を超える水の中に出れば、足を取られて命を落とすおそれがあります。1995年の関川水害では、浸水深が膝(0.5m)の高さ以上になると、ほとんどの方が避難困難になりました(出典:浸水深と避難行動について|国土交通省川の防災情報)。
そのため、土のうを積み足すために外へ出る行動は、道路の水位が上がり始めた段階で打ち切りましょう。避難場所や非常用持ち出し袋の準備については、下記の記事にて解説しているので、併せて読んでみてください。
今すぐできる「災害」への備え。押さえておきたい5つのポイント
家の浸水リスクの調べ方

自宅の浸水リスクは、国土交通省のハザードマップポータルサイトと市区町村のハザードマップで、想定浸水深と水の種類を確認して調べます。
止水で持ちこたえるか早めに避難へ切り替えるかは想定浸水深で決まり、土のうと逆流対策のどちらを優先するかは水の種類で変わるので、両方をそろえてから対策を選びましょう。
川の浸水想定区域から外れていても、道路より低い玄関や1階の排水口がある家には、下水や水路からあふれた水が入り込むおそれがあります。
外水氾濫と内水氾濫の違い
外水氾濫は川からあふれて起こる浸水、内水氾濫は市街地に降った雨を川へ排水しきれずに起こる浸水です。
2008〜2017年の10年間に全国で浸水した建物のうち、68%にあたる約22万棟は内水氾濫によるものでした。同じ10年間の東京都では、水害の被害額の71%を内水氾濫が占めています(出典:近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について(資料3)|国土交通省)。
水の種類ごとの仕組みと侵入口、有効な対策の方向は、次のとおりです。
| 水の種類 | 起こる仕組み | 主な侵入口 | 有効な対策の方向 |
|---|---|---|---|
| 外水氾濫 | 川の水が堤防を越える・堤防が壊れる | 玄関・窓など建物の開口部 | 止水板や土のうで開口部をふさぐ |
| 内水氾濫 | 市街地の雨を川へ排水しきれない | 道路面より低い玄関・半地下・掘り込みガレージ | 雨水桝の清掃・水のう・止水板・雨水貯留槽・雨水浸透桝 |
| 下水の逆流 | 満水になった下水管の水が押し戻される | 1階のトイレ・浴室・洗濯機の排水口 | 水のうで排水口をふさぐ・逆流防止弁・圧力開放蓋 |
(出典:家庭でできる浸水対策|平塚市)
玄関に止水板を立てても、1階の排水口から上がってくる水は止まりません。
ハザードマップで想定浸水深を確かめる手順
想定浸水深は、ハザードマップポータルサイトで洪水の想定を確認し、市区町村の内水マップと見比べて読み取ります。
ハザードマップポータルサイトは国土交通省と国土地理院が運営し、重ねるハザードマップでは洪水・土砂災害・高潮・津波のリスクを地図に重ねて表示できます(出典:ハザードマップポータルサイト|国土交通省・国土地理院)。
家の浸水深を読み取る手順は、次のとおりです。
- 重ねるハザードマップで住所を入力する
- 洪水・内水と高潮の情報を表示し、家の位置の色を凡例と照らす
- わがまちハザードマップから市区町村の内水マップを開く
- 洪水・内水・高潮のうち最も深い浸水深を書き留める
ただし、洪水の色だけで区域外と判断すると、下水や側溝からあふれる浸水を見落とします。書き留めた数値は、0.5m未満・0.5〜1.0m・1.0〜2.0m・2.0〜5.0m・5.0m以上のどれに当たるかを確認してください。
区域外でも浸水しやすい家の特徴
ハザードマップで色が塗られていない場所でも、道路より低い玄関や1階の排水口がある家は浸水するリスクがあります。
国は2020年8月から、重要事項説明でハザードマップ上の物件の位置を示すよう義務付けました。あわせて、区域外だからリスクがないと誤解させないよう配慮することも求めています。
内水氾濫は川から離れた市街地でも起こり、地下室への流入や下水の逆流で浸水被害が出るのが特徴です。大雨で下水管が満水になると、トイレや浴室、洗濯機の排水口から水が吹き出すこともあります。
区域外の家で確認したい特徴と、先に打つ対策は次のとおりです。
| 家の特徴 | 起こりやすい浸水 | 先に打つ対策 |
|---|---|---|
| 道路より低い玄関 | 道路にあふれた雨水が玄関へ流れ込む | 止水板・土のう・水のうで出入口をふさぐ |
| 掘り込みガレージ | 道路から下る床に雨水が集まる | 止水板・土のうでガレージの入口をふさぐ |
| 半地下の居室 | 地下室への流入と下水の逆流 | 出入口の止水と逆流防止弁 |
| 1階の排水口(トイレ・浴室・洗濯機) | 下水管が満水になると排水口から吹き出す | 逆流防止弁・圧力開放蓋、応急処置として水のう |
| 雨どいが汚水桝につながっている(分流式下水道の地域) | 大雨で汚水管に雨水が流れ込み、トイレが流れにくくなる | 排水設備指定工事店に接続の手直しを頼む(費用は自己負担) |
| 詰まった雨水桝や側溝 | 雨水が流れ込めず敷地にたまる | 雨の前に雨水桝を掃除する |
(出典:家庭でできる浸水対策|平塚市/大雨時、トイレが流れない?逆流も?!|さいたま市)
道路より低い玄関と1階の排水口のように特徴が2つ以上重なる家では、雨水が集まる場所と逆流の入口が同じ建物にそろいます。
家の水害対策で大雨の前にやること

大雨の前にやることは、出入口と排水口をふさぐこと、敷地の排水をつまらせないこと、1階の家電と貴重品を高い場所へ移すことの3つです。
最初にふさぐのは1階のトイレや浴室の排水口で、玄関に水が届く前でも、下水管からあふれた水が逆流してくる入口になります。
土のうや水のうはお金をかけずに用意できますが、止められるのは浅い浸水までです。
土のうと水のうで出入口をふさぐ
出入口からの浸水は、玄関などの前に土のうか水のうを隙間なく並べて軽減しましょう。土のうは自治体の土のうステーションで入手できる場合があります。
たとえば、平塚市のステーションは誰でも24時間利用可能です(出典:家庭でできる浸水対策|平塚市)。
土のうが手元にない場合は、45リットル程度のビニール袋を二重・三重に重ね、半分(20リットル程度)ほど水を入れて口をきつく縛った水のうで代用できます。
水のうを段ボール箱に詰め、レジャーシートで包んで出入口に並べる方法も取り入れてみてください。水は玄関以外の開口部からも入るため、次の場所をまとめてふさいでください。
- 玄関
- 勝手口
- 掘り込みガレージの入口
- 床下換気口
玄関だけを固めて勝手口や床下換気口を残すと、水は低い開口部へ回り込み、床下への浸水は防げません。
トイレと排水口の逆流を水のうで防ぐ
トイレや浴室・洗濯機の排水口からの逆流は、便器と排水口に水のうを置き、雨のあいだは大量の排水を控えて防ぎましょう。
大雨で下水管が満水になると屋内の排水口から下水が吹き出すことがあり、出入口の土のうでは守れません。
トイレは、便座を上げて便器にビニール袋をかぶせ、その上に水のうを置いてから便座を下ろして押さえます。また、浴室・洗面台・洗濯機の排水口は、排水口がすき間なくふさがるように水のうを置きます(出典:家庭でできる浸水対策|川越市)。
雨水桝と側溝と雨どいを掃除する
雨水桝と側溝、雨どいの泥や落ち葉は、大雨の前に取り除いておきましょう。雨水桝の上にビニール袋や落ち葉がたまると、雨水が桝に流れ込まなくなります。
雨水桝の掃除は、費用をかけずに浸水を減らせる内水対策です。掃除の際に、雨どいの下端がどの桝へ入っているかもあわせて確認しておくと安心です。
家電と貴重品を高い場所へ移す
1階にある家電と貴重品・重要書類は、雨水桝や雨どいの点検を終えたら2階か高い棚へ移しましょう。浸水深が0.5〜1.0mになると床上浸水となり、水位は大人の腰の高さまで上がります。
腰の高さの水位は、床に置いたテレビやパソコンだけでなく、低い引き出しにしまった通帳や保険証券までぬれる高さです。移す物は、避難時に必要になる順で次のように決めてください。
- 通帳・印鑑・保険証券などの重要書類
- パソコンやテレビなど持ち上げられる家電
- 床に直置きした家財
重要書類は防水袋に入れて持ち出し袋にまとめておくと、家を離れる判断が遅れません。
冷蔵庫や洗濯機のように動かせない家電は、電源プラグを抜くかを事前に家族で決め、分電盤の位置と懐中電灯の置き場所も確認しておきましょう。
家財の移動は、浸水が始まる前にしかできません。水位が膝の深さに近づいたら途中でも切り上げ、避難に切り替えてください。
リフォームでできる家の水害対策と助成金

リフォームで水害に備えるなら、水が入る経路に合わせて止水板・逆流防止の器具・給湯器や室外機の移設・雨水をためてしみ込ませる設備の4つから選びましょう。
止水板は出入口、逆流防止の器具は排水口というように、工事ごとにふさげる水の経路が分かれています。
工事ごとに防げる浸水と相談先は、次のとおりです。
| 工事 | 防げる浸水 | 相談先 | 助成の例 |
|---|---|---|---|
| 止水板の設置 | 玄関や車庫など出入口から入る浅い浸水 | 止水板メーカー・リフォーム会社 | 設置費用を助成する区市町村がある |
| 逆流防止弁と圧力開放蓋の設置 | 下水があふれて排水口から吹き出す逆流 | 自治体の排水設備指定工事店 | 自治体ごとに異なる |
| 給湯器と室外機の移設 | 浸水そのものではなく機器の水没による故障 | 給湯器の設置業者・空調設備業者 | 自治体ごとに異なる |
| 雨水貯留槽と浸透桝の設置 | 敷地から下水へ流れ込む雨水を減らし、内水氾濫を抑える | 自治体の下水道担当・排水設備指定工事店 | 設置費用を助成する区市町村がある |
1つの工事ですべての浸水は防げません。自宅はどの経路から水が入りやすいかを先に見極め、その経路に効く工事から選んでください。
止水板の設置と自治体の助成制度
止水板の設置は自治体の助成を使うと費用を抑えられ、板橋区では費用の2分の1以内、1つの建築物につき上限50万円が助成されます。
止水板がふさぐのは開口部だけなので、想定浸水深が板の高さを超える家では、水が板を越えて入ります。取り外し式は大雨の前に人が取り付けないと働かないため、保管場所と取り付けの手間まで含めて選びましょう。
自分の自治体の制度は、次の項目を板橋区の例と見比べて確認してください。
| 確認する項目 | 板橋区の例 | 自分の自治体で見る点 |
|---|---|---|
| 助成額 | 費用の2分の1以内・1建築物あたり上限50万円 | 補助率と上限額 |
| 対象の範囲 | 止水板設置工事等 | 工事費か購入費か |
| 相談・申請の時期 | 設置を検討する段階で窓口へ相談 | 契約・着工より前に申請が要るか |
| 対象者と建物の条件 | 区の「止水板設置工事助成のご案内」に記載 | 区域内の建物か・所有者が申請できるか |
業者に発注してから助成の対象外だと分かっても、支払った費用は戻りません。
逆流防止弁と圧力開放蓋の設置
下水の逆流を工事で防ぐなら、逆流防止弁か圧力開放蓋を設置しましょう。
豪雨で下水管が満水になると、トイレや風呂場、洗濯機の排水口から下水が吹き出します。
逆流防止弁は、宅地内の汚水桝に付けて、逆向きに流れる水の力で弁を閉じる器具です。圧力開放蓋は、管内の空気の圧力を地上へ逃がし、室内への吹き出しを抑えます。
どちらも宅地内の排水設備の工事なので、施工は市区町村の公共下水道指定工事店に依頼してください。
給湯器と室外機の高い位置への移設
給湯器とエアコンの室外機は、想定浸水深より高い架台や2階のバルコニーへ移しましょう。
屋外機は地面近くに置かれることが多く、水につかると湯と冷暖房が使えない期間が長引きます。水につかった機器は、内部の電装部品を点検するまで通電を避けてください。
国が電気設備の浸水対策ガイドラインの対象にしたのは、マンション・オフィスビル・病院など高圧受変電設備のある建物です(出典:報道発表資料:「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をとりまとめました|国土交通省)。
設備を水の届かない高さに置く考え方は、戸建ての給湯器や室外機にもそのまま使えます。移設で見落としやすい点は、次のとおりです。
- 配管の接続部や屋外コンセントを低いまま残す
- 架台をアンカーで固定せず、強風や地震で倒れる
- 室外機の配管がメーカーの定める長さを超える
移設先の高さはハザードマップの想定浸水深を基準にし、配管の取り回しまで含めて施工業者と決めてください。
雨水貯留槽と浸透桝の設置
雨水貯留槽と雨水浸透桝は地域の内水氾濫を抑える設備で、浸水想定のある家では止水板と逆流防止弁を先に備えたうえで上乗せする対策です。
雨水貯留槽は屋根の雨水をためる設備、雨水浸透桝と透水性舗装は雨水を地面にしみ込ませる設備で、どちらも河川や下水道へ流れ出る雨水の量を減らします。
雨水貯留槽と浸透桝は地域全体の排水の負担を軽くする設備であり、自宅の玄関や排水口から入ってくる水をせき止める働きはありません。
水害に強い家を新築するときの設計ポイント

水害に強い家を新築するときは、土地の浸水想定を契約前に確認し、敷地と床の高さを着工前に、分電盤や給湯器の高さを設備工事の前に決めましょう。
敷地と床の高さは基礎を打ったあとでは変えられず、設備も配線と配管を通した後に動かすと移設工事が別にかかります。設計項目ごとに決める期限と確認先は、次のとおりです。
| 設計項目 | 決める期限 | 確認する資料・相手 |
|---|---|---|
| 土地の浸水想定 | 土地・物件の契約前 | 洪水・内水のハザードマップ、重要事項説明書、市区町村の窓口 |
| 敷地のかさ上げ | 着工前(造成・地盤工事の前) | 造成計画図、地盤調査報告書、設計担当者 |
| 床の高さ(基礎の高さ) | 着工前(基礎工事の前) | 矩計図、基礎伏図、設計担当者 |
| 分電盤・給湯器・室外機の高さ | 設備工事の前 | 電気設備図、給排水設備図、設備担当者 |
| 上階の生活スペースと電源 | 間取りの確定前 | 平面図、電気設備図、設計担当者 |
最初に確認した想定浸水深が、床の高さから設備を置く高さまでを決める基準になります。
土地と分譲住宅は契約前に浸水想定を確かめる
土地や分譲住宅は、契約前に洪水と内水の両方の地図で想定浸水深を確認してから購入を決めましょう。
2020年8月28日から、不動産取引の重要事項説明の項目に、水防法に基づく洪水・雨水出水・高潮のハザードマップにおける物件の所在地が加わりました(出典:不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化|国土交通省)。
雨水出水は、下水道や水路から水があふれる内水氾濫のことで、川から離れた土地にも浸水想定が示されます。
重要事項説明の場で初めて浸水想定を知ると、購入をやめるか考える時間はほとんど残りません。物件を見学する段階で、重ねるハザードマップの「洪水・内水」の表示から住所の想定浸水深を調べておきましょう(出典:ハザードマップポータルサイト|国土交通省・国土地理院)。
調べた想定浸水深は、設計の打ち合わせで床の高さや設備の位置を決めるときの基準の数値になります。
敷地のかさ上げと床の高さは着工前に決める
敷地のかさ上げと床の高さは、工事が始まると変えられないため、設計の初期に想定浸水深と照らして決めましょう。
地面から1.5mまでの浸水なら、基礎を高くして床上浸水を防ぐ方法もとれます。ただし、床下にも水を入れない高い基礎は、浸水深1m程度でも浮力で家ごと浮き、流されるおそれがあります(出典:住宅における浸水対策の設計の手引き(2021年7月)|一般社団法人住宅生産団体連合会)。
床下を密閉するか、通水と排水を確保するのかの判断には、構造・基礎形式・想定浸水深・流速の検討が欠かせません。
盛り土のかさ上げでは擁壁と地盤の補強も要るので、高基礎とあわせて基礎と浮力まで設計者に検討してもらいましょう。加えて、1階の床を高くするほど、費用と玄関までの段差も増えます。
盛り土によるかさ上げは基礎をつくる前に地盤を整える工程で行い、床の高さは基礎の立ち上がりで決まります。
想定浸水深は地盤面からの深さを示すので、図面の設計地盤面から床面までの寸法と並べ、床面が浸水深より上に来るかを見てください。
浅い浸水は建物の開口部と敷地の堀で止める
想定浸水深が基礎の上端(地面から0.4m程度)までの土地では、建物の開口部をすべてふさぐか、敷地を塀と止水板で囲う設計で、水を建物に入れない対策がとれます。
建物で止めるなら、玄関ドア・勝手口・掃き出し窓・基礎の換気口・配管の貫通部に加え、排水管からの逆流まですべてに対策が要ります。
一般的な住宅の玄関ドアや窓は、浸水したときの水圧に対して水を止める性能を持っていません(出典:住宅における浸水対策の設計の手引き(2021年7月)|一般社団法人住宅生産団体連合会)。
敷地で止めるなら、水圧に耐えて水を通さない塀で敷地を囲み、人や車が出入りする部分に止水板を付けます。塀は構造と基礎、継ぎ目の止水部まで水圧を前提に設計し、塀の内側に降った雨を外へ出す排水も決めておきましょう。
周りの水を敷地内に閉じ込めるおそれもあるため、造成と排水の計画と一体で設計者に検討してもらってください(出典:家庭でできる浸水対策|平塚市)。
どちらの方法も浅い浸水に限った対策で、1階の床より上まで水が来る深さでは、建物に水を入れない設計は難しくなります。
分電盤と給湯器は想定浸水深より高く置く
分電盤・給湯器・室外機・屋外コンセントは、自宅の想定浸水深より高い位置に置くよう、設計の段階で図面に高さを書き込んでもらいましょう。
戸建て住宅で基準にするのは、ハザードマップで調べた自宅の想定浸水深です。想定浸水深は地面からの水の深さで示されるので、かさ上げと床の高さを決めた図面でも、設備の高さを地盤面からの数値で比べます。
設備ごとに、見落としやすい点と設計で指定することを次の表にまとめました。
| 設備 | 見落としやすい点 | 設計で指定すること |
|---|---|---|
| 分電盤 | 間取りの都合で1階の壁に置かれやすい | 想定浸水深より上の壁か2階に置く |
| 給湯器・エコキュート | 地面のコンクリート基礎に据えるのが一般的 | 高くした基礎や架台に載せられるか、メーカーの施工条件と合わせて確認する |
| エアコン室外機 | 地面に直置きされやすい | 架台で持ち上げるか、ベランダに置く |
| 屋外コンセント | 地面に近い高さに付けられやすい | 想定浸水深より上に付ける |
図面に高さの指定がないと、給湯器や室外機は通常どおり地面に据えられ、想定浸水深が0.5mの土地でも水に浸かる位置のまま引き渡されます。
浸水後も上階で暮らせる間取りと電源を備える
浸水に備える家は、2階以上に寝る場所と飲み水と電源をそろえておくと、1階が水につかっても上階で一旦の生活が可能です。
浸水深1.0〜2.0mでは1階の軒下まで、2.0〜5.0mでは2階の軒下まで水が届きます。そのため、想定浸水深が2.0m以上の区域では、上階にとどまるより早めの立ち退きを優先しましょう。
太陽光発電と蓄電池があれば、停電中も自宅でつくった電気を使える場合があります。導入するときは、蓄電池を2階に置くなど、機器を想定浸水深より高い位置に置けるか確認してください。
&RESORT HOUSEのレジリエンス住宅ウーディアシリーズは、太陽光発電と蓄電池を標準装備し、ZEH基準に対応しています(出典:ジャパン・レジリエンス・アワード|株式会社アイム・ユニバース)。
屋上テラスは逃げ遅れたときの緊急避難先
屋上テラスのある家では、逃げ遅れたときの緊急避難として、屋上に上がることも選択肢の1つになります。ただし、屋上や上階への移動は、屋外への避難が間に合わない場合の緊急的な垂直避難です(出典:浸水深と避難行動について|国土交通省川の防災情報)。
屋上を避難先に想定するなら、安全に上がれる階段や転落防止の対策、出入口の開閉、通信手段、長時間とどまるための備えまで確認しておきましょう。
上階に生活の場を置く3階建ての間取りの実例については、下記の記事にて解説しているので、併せて読んでみてください。
設計担当者への質問を着工前に用意する
設計担当者には、水害は大丈夫かと聞くのではなく、内水の浸水想定や床の高さの上げ幅のように項目を決めて質問しましょう。
漠然と聞くと、洪水の浸水想定区域の外ですという答えで会話が終わりがちです。洪水の区域外という答えは、内水の想定まで調べたうえでの答えとは限りません。打ち合わせでは、次の項目を順に聞いてください。
- この土地に内水の浸水想定はあるか、想定浸水深は何mか
- 敷地のかさ上げはできるか、費用と工期はどれくらいか
- 床の高さは標準から何cm上げられるか
- 分電盤・給湯器・室外機を想定浸水深より上に置けるか
- 床下換気口は地面から何cmの位置にあるか
- 2階だけで電気を使えるよう回路を分けられるか
- 下水の逆流防止弁を付けられるか
高さに関わる項目は、基礎や配管の位置が決まると変えにくくなります。
火災保険の水災補償が支払われる条件

水災補償は、床上浸水か地盤面から45cmを超える浸水、または建物や家財に再調達価額の30%以上の損害が出たときに支払われるのが一般的です。
水災を補償から外した契約もあるので、契約中の方は手元の保険証券で水災の補償が付いているかを確認してください。支払いの条件も、保険会社や商品ごとに異なります。
床上浸水か地盤面から45cm超の浸水が目安
三井住友海上の水災補償では、床上浸水か、地盤面より45cmを超える浸水で建物や家財に損害が出た場合が支払いの対象です(出典:【火災保険】水災で保険金が支払われる条件を教えてください|三井住友海上)。
基準は45cm以上ではなく45cmを超える浸水なので、床上に達していなければ、ちょうど45cmの浸水では条件を満たしません。
もう1つの条件は、再調達価額(同じ物を建て直す・買い直す金額)の30%以上の損害が出た場合です。床下浸水で深さも45cmまでの場合は、損害が30%に届かない限り支払いの対象外になります。
室外機だけが浸水した損害は対象外になる
三井住友海上のGKすまいの保険(2024年10月1日以降に始まる契約)では、床上浸水せずエアコンの室外機だけが浸水した損害は、水災の支払いの対象外です。
同社には、浸水の条件を満たさない水災で壊れた給湯器や蓄電設備の修理・買い替え費用に備える特約もあります(出典:水災の補償内容|三井住友海上)。
給湯器や室外機を想定浸水深より高い位置に置くと、補償の条件に届かない浅い浸水での故障を減らせます。
自体が支払いの条件に当てはまるかの確認手順
自宅がどの条件に当てはまるかは、次の順で確認してください。
- 保険証券で水災の補償が付いているかを確認する
- 支払いの条件(浸水の深さと損害の割合)を読む
- ハザードマップの想定浸水深を45cmの基準と照らし合わせる
基準の起点は道路ではなく地盤面なので、道路の冠水の深さは当てはめないでください。想定浸水深が45cmを超えなくても、1階の床の高さを超えれば床上浸水にあたります。
水災等地の5区分と自宅の区分の調べ方
自宅の水災等地は、損害保険料率算出機構の水災等地検索で都道府県と市区町村を選ぶと調べられます。
水災補償の保険料は市区町村ごとに1等地から5等地の5段階に分かれ、5等地は1等地の約1.5倍です。見積もりを取る前に、次の手順で区分を調べておきましょう。
- 損害保険料率算出機構の水災等地検索のページを開く
- 都道府県を選ぶ
- 市区町村を選んで検索する
- 表示された等地の数字を控える
(出典:水災等地検索|損害保険料率算出機構)
検索結果が1等地でも、水災補償を外してよい根拠にはなりません。水災等地は外水氾濫に加えて内水氾濫と土砂災害も評価に含め、市区町村単位で相対的に並べた区分で、どの等地の地域でも水害は発生しています。
同じ市区町村でも、川沿いの低地と高台では浸水の危険が大きく違います。等地の扱いは保険会社ごとに異なる場合があるので、見積もりでは水災補償の有無による保険料の差額を比べてください。
補償を外すかどうかは、自宅の想定浸水深が床上浸水や45cm超の支払い条件に届くかで決めましょう。
家の水害対策のまとめ
家の水害対策は、自宅の想定浸水深と浸水の原因をハザードマップで確認し、深さに合った対策を選ぶことが基本です。
想定浸水深が0.5m未満の場合は出入口と排水口をふさぐ対策を、0.5m以上のときは設備と家財を高い位置へ移す対策と早めの避難を優先してください。
加えて、新築や分譲住宅の購入では、敷地のかさ上げと床の高さ、分電盤と給湯器の設置高さは着工後に変えにくく、着工前に決めておく必要があります。
&RESORT HOUSEは、東京・千葉・埼玉・神奈川・沖縄で新築分譲住宅と注文住宅を手がけるリゾート邸宅のブランドです。
検討中の物件があれば、&RESORT HOUSEの物件情報で所在地を確かめ、重ねるハザードマップで想定浸水深を調べましょう。見学のときは、1階の床の高さと、給湯器・室外機を置く高さを担当者に確認してください。
屋上テラスのある家「&RESORT HOUSE」
家の水害対策に関するよくある質問
内水のハザードマップは、ハザードマップポータルサイトのわがまちハザードマップで探し、見つからなければ市区町村の下水道の担当窓口に問い合わせてください。nnわがまちハザードマップは、市町村が法令に基づいて作成・公開しているハザードマップへのリンク集です。同じサイトの重ねるハザードマップでも、「洪水・内水」の表示で住所を入れて浸水の想定を確認できます(出典:ハザードマップポータルサイト|国土交通省・国土地理院)。nn内水の地図を作っていない市区町村もあるので、窓口では過去に浸水した場所の記録もあわせて聞いておきましょう。
大雨のときに台所やトイレの排水口からゴボゴボと音がするのは、下水管が満水に近づき、逆流が起きる前ぶれのことがあります。nn音が聞こえたら、トイレ・お風呂・洗濯機の排水を控えてください。そのうえで、45リットル程度の袋を2〜3重にして水を入れ、空気を抜いて口を絞ってから、便器や排水口の上にかぶせましょう(出典:大雨時、トイレが流れない?逆流も?!|さいたま市)。nn水のうを置いても水があふれてくるときは、お住まいの自治体の下水道の担当窓口へ連絡します。
かさ上げは盛り土で敷地そのものを高くする方法で、基礎を高くするのは建物の床だけを持ち上げて水を床上に届きにくくする方法です。nn敷地ごと高くするかさ上げでは、屋外に置く給湯器やエアコンの室外機も地盤と一緒に上がります。基礎を高くする方法では床下と屋外の設備が元の地盤の高さに残るため、設備を別に高い位置へ置く計画が欠かせません。
賃貸住宅でも、水のうで排水口と出入口をふさぐこと、家電と貴重品を高い場所へ移すこと、避難の判断を早めることは工事なしでできます。nn水のうは便器や浴室の排水口の上にかぶせ、大雨のあいだはトイレ・お風呂・洗濯機の排水を控えることで、下水の逆流を防止可能です(出典:大雨時、トイレが流れない?逆流も?!|さいたま市)。nn玄関には、水を入れたポリタンクや土を入れたプランターをレジャーシートで包んで並べる方法も使えます。水が出入口を越えて膝の深さに近づいたら、水のうの補強をやめて避難を優先しましょう。nn止水板の常設や給湯器・室外機の移設は建物に手を加える工事なので、入居者の判断だけでは進められません。
片付けや修理を始める前に、建物と家財の被害を写真に残し、保険会社と市区町村へ連絡してください。nn防犯や安全のために片付けを急ぐ場合も、損傷箇所の写真があれば後日訪れる保険会社の担当者に渡せます。nn撮影では、建物の全景を周囲4面から撮り、浸水した壁にメジャーを当てて、全体の遠景と目盛りが読める近景を分けて残します(出典:住まいが災害で被害を受けたときの状況写真の撮影について|矢吹町公式ホームページ)。nn市区町村が発行する罹災証明書は住家の被害を証明する書類で、被災者生活再建支援金の受け取りや公費解体などの公的支援に欠かせません。nn申請先は自治体ごとに異なり、品川区では地域センターや区役所防災課のほか、マイナポータルからオンラインでも申請できます(出典:罹災証明書の発行について|品川区)。